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Audible(オーディブル)で聴く芥川賞おすすめ12作品|物語の題材と朗読者で選ぶ

Audibleで芥川賞受賞作を聴くなら、会社の同僚との登山を描く『バリ山行』、ティーバッグの名言から調べ物が始まる『ゲーテはすべてを言った』がおすすめです。短めの一作を選びたいときには、1時間50分の『ハンチバック』もあります。

この記事の目次
  1. 芥川賞の12作品を、朗読者と再生時間で比較
  2. 私が推したいのは『推し、燃ゆ』|好きなものに支えられる感覚から入る
  3. 最初の一冊は、時間よりも「何の話か」で絞る
  4. 現実と少し違う世界を、声から組み立てる3作品
  5. 土地・記憶・日常の引っかかりから選ぶ5作品
  6. 同じ回の受賞作を、違う題材で聴き比べる

登山、職場の食事、恋愛番組、推しを応援する暮らし。同じ芥川賞の受賞作でも、出会う人物も物語の形も違います。聴いてみたい題材と、読み手の名前から一冊を探せます。

初回対象者は30日無料、そのあとは通常月額1,500円で自動更新です。ここで紹介する聴き放題はプレミアムプランのもの。スタンダードでも全タイトルから選べますが、聴き方や保持条件が違います。詳しくはAudibleの料金とプランの違いで説明しています。

芥川賞の12作品を、朗読者と再生時間で比較

作品・著者 受賞回・対象期 朗読者 音声版の再生時間
ハンチバック/市川沙央 第169回・2023年上半期 くわばらあきら 1時間50分
叫び/畠山丑雄 第174回・2025年下半期 石狩勇気 3時間20分
この世の喜びよ(小説集)/井戸川射子 第168回・2022年下半期 志摩淳・林祐人 3時間27分
推し、燃ゆ/宇佐見りん 第164回・2020年下半期 玉城ティナ 3時間34分
おいしいごはんが食べられますように/高瀬隼子 第167回・2022年上半期 椎名ライカ 4時間11分
東京都同情塔/九段理江 第170回・2023年下半期 白妙あゆみ 4時間19分
サンショウウオの四十九日/朝比奈秋 第171回・2024年上半期 疋田涼子 4時間37分
DTOPIA (デートピア)/安堂ホセ 第172回・2024年下半期 青柳いづみ 4時間44分
ブラックボックス/砂川文次 第166回・2021年下半期 向山太規 5時間27分
バリ山行/松永K三蔵 第171回・2024年上半期 石狩勇気 5時間32分
貝に続く場所にて/石沢麻依 第165回・2021年上半期 ささきのぞみ 6時間16分
ゲーテはすべてを言った/鈴木結生 第172回・2024年下半期 吉開清人 6時間45分

『この世の喜びよ』は、受賞した表題作に「マイホーム」「キャンプ」を加えた小説集です。音声版には3編とも収録されています。

私が推したいのは『推し、燃ゆ』|好きなものに支えられる感覚から入る

あかりは、アイドルの上野真幸を応援し、その言葉や振る舞いを理解しようと力を注いでいます。その推しが、ファンを殴ったとして炎上しました。応援する相手の出来事が、あかり自身の生活を揺らす物語です。玉城ティナさんが朗読しています。

あかりにとって、上野真幸を応援することは毎日の暮らしを支えるものです。だから炎上は、芸能人に起きた遠い出来事では済みません。自分を支えてきた相手が批判されるとき、あかりの生活はどうなるのか。ニュースになった事件の大きさより、その人を応援しながら生きている一人の側から読んでみてほしい作品です。

好きなものがあることで、どうにか毎日を送れる。その感覚に覚えのある人にも読んでほしい一冊です。

最初の一冊は、時間よりも「何の話か」で絞る

職場の人付き合いから入りたいなら『バリ山行』

朗読:石狩勇気さん

波多は、建物の外装を修繕する会社に転職して2年目。会社の人との付き合いを避けてきましたが、同僚に誘われ、六甲山へ登ることになります。山道を歩きながらも、同僚たちとの話題は仕事です。

一方、先輩社員の妻鹿(めが)は、一般の登山道を外れる「バリ」という登り方をしています。登山道の外から突然現れる妻鹿に、周りの社員たちは驚きます。波多も、自分たちとは違う山の楽しみ方にひかれていく。会社の付き合いから始まった登山で、一人の先輩との出会いが、歩く道も人との距離も変えていく小説です。

言葉の謎を追いたいなら『ゲーテはすべてを言った』

朗読:吉開清人さん

ゲーテ研究者の博把統一は、家族との食事で、ティーバッグのタグに書かれた言葉を見つけます。長年ゲーテを調べてきた自分にも、覚えがない。誰のどこにある言葉なのかと原典を探すうち、研究をしてきた日々の記憶もたどっていきます。

「この言葉は本当にあの人が言ったのか」という疑問を追う小説です。SNSで見かけた名言の出どころが気になる人や、調べ物から別の記憶がつながっていく感覚が好きな人に。

ユウ

「名言の出どころまで気にすると、お茶が冷めちゃいそう」

ミナ

「気になった言葉を、そのまま忘れるのも惜しいな」

ユウ

「じゃあ、調べものが終わってからお茶にする?」

ミナ

「先におかわりを用意する。長くなりそうだから」

ゲーテはすべてを言ったの表紙
ゲーテはすべてを言った鈴木 結生表紙画像:Audible

『ハンチバック』|自室から発信する釈華と、介助者との関係

朗読:くわばらあきらさん

井沢釈華は、両親が残したグループホームの自室で暮らしています。背骨が大きく曲がり、身体に制約のある釈華にとって、読むことも、生きていくことも、身体と切り離せません。

ネットでは「Buddha」という名で風俗体験記を書き、その収益を寄付する一方、別の匿名アカウントには、妊娠や中絶をしたいという願いを書き込んでいます。その投稿をヘルパーの田中に知られたことから、二人は妊娠のための金銭契約を結ぶことに。自室から発信していた言葉が、介助を受ける相手との関係を動かしていきます。

現実と少し違う世界を、声から組み立てる3作品

『東京都同情塔』|刑務所を設計する沙羅の葛藤

朗読:白妙あゆみさん

舞台は、ザハ・ハディドの国立競技場が完成した、もう一つの日本。犯罪者に快適な暮らしを保障する新しい刑務所の設計に、建築家の牧名沙羅が名乗りを挙げます。ただ、沙羅自身は犯罪者に寛容になれず、引き受ける仕事と自分の信条との間で苦悩しています。

施設の名は「シンパシータワートーキョー」。沙羅はその呼び方も受け入れられません。年下のデート相手・東上拓人が「東京都同情塔」と言い換えたのを聞くと、建物のデザインに方向が見えてきます。何をどう呼ぶのかという言葉の選択が、建築の計画ともつながる小説です。

『東京都同情塔』を聴き始めた夜、ザハ・ハディドの国立競技場が出てきて、いまの東京のどの辺りの話なのかと地図を開きました。場所を探すことに気を取られて建物の説明を聞き逃して、再生を止めるはめに。そこで作品紹介を読み、現実とは違う日本が舞台だと押さえてから、地図を閉じて聴き直しました。実際の街に当てはめるのをやめたら、声から自分なりの都市を想像して聴けるようになりました。

『DTOPIA(デートピア)』は、恋愛リアリティショーを舞台にした小説

朗読:青柳いづみさん

ボラ・ボラ島の恋愛リアリティショーで、ミスユニバースをめぐって10人の男性が競います。出場者の呼び名は、Mr.LA、Mr.ロンドンなど。二人きりの恋愛ではなく、ほかの男性と競いながら選ばれる番組が舞台です。

恋の相手にどう思われたいかと、番組の中でどう見られるか。その両方を気にする場で、人はどんな姿を見せるのか。恋愛番組を見るとき、出演者の言動まで気になってしまう人にも勧めます。

『サンショウウオの四十九日』は、自分と隣の人の境界を問う

朗読:疋田涼子さん

杏と瞬は、一つの身体を共有する双子の姉妹です。他人からは一人に見えても、二人にはそれぞれの意識があります。相手の考えや記憶まで分かるのに、自分と相手は同じではない。

誰かと一緒にいても、自分の頭の中までは知られない。そんな普段の前提が、二人にはありません。身体も思考も共有する姉妹を通して、「私」とは何かを考える、朝比奈秋さんの小説です。

サンショウウオの四十九日の表紙
サンショウウオの四十九日朝比奈 秋表紙画像:Audible

土地・記憶・日常の引っかかりから選ぶ5作品

『叫び』|人をきっかけに、土地の歴史へ関心が広がる

朗読:石狩勇気さん

夜の散歩中、早野ひかるは鐘の音をたどって畑の穴へ入ります。そこで銅鐸を鳴らしていた年配の男性が、早野の「先生」となる人物です。銅鐸を作るこの男性の博識にひかれ、早野は土地の来歴を学び始めます。

大阪の土地を足掛かりに、かつてのけしの栽培やアヘンの製造、満州へ渡った青年の時代へ話が広がります。

いま暮らす土地の過去を知ろうとすると、昭和と令和の人々の声が重なってくる。現在の一人を追うだけでなく、場所を通して別の時代へも進む小説です。

『この世の喜びよ』|記憶にまつわる小説集を選ぶ

朗読:志摩淳・林祐人さん

娘たちが幼い頃、一緒に過ごしたショッピングセンター。その喪服売り場に勤める主人公が、フードコートに通う少女と出会います。小説の中で主人公は「あなた」と呼ばれ、いまの売り場や少女の姿に、娘たちと過ごした記憶が重なっていきます。

この音声版には、住宅への体験宿泊を描く「マイホーム」、叔父とキャンプに行く少年の話「キャンプ」も入っています。三つの物語を、一編ずつ区切って聴けます。

『おいしいごはんが食べられますように』|食事と人間関係の話

朗読:椎名ライカさん

料理が上手で、周囲から守られる芦川。仕事ができて頑張り屋の押尾。そして職場でそこそこうまくやっている二谷。食べることを通して、この三人の好意や不公平感が見えてきます。

おいしいものを分け合えば、誰もがうれしいはず。そう単純にはいかない職場で、誰が気を使い、誰が支えてもらうのか。温かそうな題名から想像するのとは違う、人間関係のざわつきを聴く小説です。

おいしいごはんが食べられますようにの表紙
おいしいごはんが食べられますように高瀬 隼子表紙画像:Audible

『ブラックボックス』|怒りを持て余す人物を追う

朗読:向山太規さん

自衛隊を辞め、自転車で都内の荷物を運ぶサクマが主人公です。冒頭では、ベンツとのアクシデントで横断歩道に転倒します。けがをすれば仕事を失うかもしれない。仕事に誇りを持つサクマは、そんな不安も抱えながら働いています。

ちゃんと生きなければと思うのに、具体的に何をどうすればよいか分からず、怒りも持て余す。働く身体と、怒りや焦りを抱えた内面の両方から、サクマという人物を追う小説です。

『貝に続く場所にて』|異国の街と、震災の記憶が重なる

朗読:ささきのぞみさん

震災で行方不明になった友人が、ドイツの学術都市で暮らす「私」のもとに現れます。震災から9年たった異国の街には、コロナ禍の影も落ちています。いま目の前にいる友人と、失ったはずの友人。その不思議な再会から、震災の記憶をたどる石沢麻依さんの小説です。

同じ回の受賞作を、違う題材で聴き比べる

第172回は『DTOPIA(デートピア)』と『ゲーテはすべてを言った』の2作品が選ばれました。恋愛番組で選ばれる人を描く話と、名言の出典を追う研究者の話。同じ賞で評価されても、気になる人物や出来事はまるで違います。

第171回の『サンショウウオの四十九日』と『バリ山行』も同時受賞です。身体を共有する二人の意識を考える話から、会社の同僚との距離感を考える話へ。同じ回を手掛かりにすると、普段は選ばない題材が次の一冊になります。

歴史小説や短編集から選びたい人は直木賞の音声版、書店員が選んだ作品を探す人は本屋大賞の音声版へ。